木内 浩司(Koji Kiuchi)
words worth craft
住宅設計で大切なことは2つあります。1つは土地(環境・風土・方位)が持つ特性に寄り添い、最適なアイデアを導くこと。2つめは対話により住まう人の想いを読み取ること。家族の距離感と笑顔の姿を想像し、街並みや環境にそっと溶け込む住宅建築を目指しています。
クライアントの要望は「中庭、ガレージ、静かに落ち着いて暮らせる住宅」。
建設地に立ち、状況を確認したところ、東西には近接した隣家、道路を挟んだ北側には2・3階に大きな窓が配された住宅、南側は不特定多数が使う駐車場という立地だった。
クライアントの中庭を採用したいという想いや、様々な要因なども含めた検討の結果、騒音や視線からのプライバシーを保護し、そして静かに落ち着いた生活を満たすために中庭型を採用するに至った。
都市の喧騒に背を向けたような外観をもつ反面、中庭は全ての主要室から見えるように住宅の中央に据え、接する部分をすべて解放した。単純な形態の中にも入り組んだ動線を成立させ、視覚だけでなく動きからも広がりを感じられるよう玄関からガレージまで回遊性を持たせ、ひと繋がりの空間配列としている。また、浴室からも中庭の植栽が望め、憩いのひと時を演出するようつとめた。
唯一中庭に面していない洗面室からは、東南にある公園の桜が見える窓を配し、都市の風景も楽しめるようポジティブな計画になっている。
私が住宅設計で大切にしている「人と人、人と物、物と物との距離感」を「中庭」という住宅の真ん中をくり抜くことで実現しようと試みた結果である。
→ 施工事例ページ
中庭を中心に、LDK、書斎、ガレージ、という主要室を配することで、家族間の視線が交差しつつも距離を保て、程良く繋がる空間構成としている。植樹する事により、外界と閉じられた空間の中にも優しさが感じられる。
南側の屋根を、冬至の太陽高度32°以下の角度で北側下がりに折り込むことにより、冬も光が入るようになっている。バルコニー床はFRPグレーチングを採用し、階段部吹き抜けを介して住空間の奥まで光が届く構成とした。より明るくする仕掛けとして、中庭に面した外壁は光を反射する白色を採用。
通風採光に加えて、プライバシーも確保できる窓配置を意識しつつ、北側道路から生活感を感じさせないシンプルな構成の意匠とすることで、静寂を表現。また、街灯が少なく、限られた間口の中でもガレージを認識しやすいように、明度差のある白と黒を採用した。